Ｗｅｂ連載小説（１０１）【ユメの行方】トキオクンにどうしても紹介したい人間がいる

Ｗｅｂ連載小説（１０１）【ユメの行方】トキオクンにどうしても紹介したい人間がいる
　ｅｐｉｓｏｄｅ　１０１　Ｄｅｃｅｍｂｅｒ　１９８１　［ｓｔａｒ］作・桜井鉄太郎　「竜二くん、ちょっと顔貸してもらおうか」　幾田トキオはいくぶん顔をこわばらせて、ナギと親密に話し込んでいる矢ノ浦竜二に呼びかけた。言いまわしがヤクザ式だったので、苦笑しながら竜二は立ち上がりトキオに向かった。　最近まで肩にかかるほどの長髪だったらしいが、いまは短く刈り込んで赤っぽい金髪にきれいに染め上げている竜二は、外国人の血が４分の１ほど入っているらしく、そのエキゾチックな風貌と鍛え上げられた肉体は、やや小柄ながら強烈で精悍な男のオーラを放っている。　「トキオクン、使い慣れてない言葉使うもんだからびっくりしちゃったよ。どうしたの？」　その笑顔を見てしまうと男性であっても魅入られてしまう。あくまでソフトに接してくる竜二に対して、トキオは心を鬼にして立ち向かっていった。　「あんまりナギにべったりしないでほしいな。彼女は僕のガールフレンドなんだから！」　「でも彼女じゃないんでしょ？　ナギちゃん、そう言ってたよ。私は誰のものでもない、ってね。まあそう心配しなさんなって。僕は彼女を口説いてるんじゃなくて富士壺の親分からガードしてくれたお礼をしていただけなんだから。でもデートの約束はしたけどね」　屈託なくそう言える竜二をトキオはうらやましく思った。なんだか恥ずかしくなってトキオはカウンターに向かい、濃いジャック・ダニエルのソーダ割りを注文した。するとご機嫌でテキーラのショットをあおっていた筑前オーナーがトキオの手をとると、すごい力でフロアの方に引っ張っていった。　「トキオクンにどうしても紹介したい人間がいるんだ。彼、地鶏一郎クン。俺の弟みたいなもんだ。もう１５年近い付き合いだ。元グループ・サウンズの隠れたスターだ。よろしく頼むよ」　地鶏一郎はトキオも見覚えのある顔だった。たしか４年ほど前、トキオがライブ・ハウス荻窪ｖｉｖａ　ｎｏｎでブッキング担当をしていたころ、ロックンローラーのキング、郷田哲也の前座で出演したことがあったはずだ。　向こうも覚えてくれていたらしくハンサムな顔をクシャクシャにして握手してきた。　「ｖｉｖａ　ｎｏｎで会ったよね。あそこの社長にしこたま飲まされて俺がつぶれちゃったとき、君が冷たいおしぼり持ってきてくれたんだ。そのあと朝までがんがんに２人で飲んだよなあ。懐かしいなあ、もう４年も前か」　そんな話をしているとき、またＶＩＰルームの方からなにか物騒な気配が漂ってきた。＜続く＞［登場人物］幾田トキオ（２８歳）：Ｔｈｅ　Ｒｅｂｅｌ　を背負って立つ音楽プロデューサー矢ノ浦竜二（２６歳）：富士壺組の若い衆。天才的なドラマー筑前修（３２歳）：カフェバーｂｌｕｅ　ｒｏｓｅのオーナー加川渚（２２歳）：愛称ナギ。歌手志望の女子大生富士壺伊右衛門（３１歳）：富士壺組の代貸。本当は気は優しい地鶏一郎　（３０歳）：元グループサウンズのスター　　　　　　　　◇　１９８０年代初め、アートや文学、映像、そして音楽にポップなものが革命的に登場した。１９８１年に始まる日本のポップ／ロックシーンからクラブムーブメントまでの時代を実際に生きた青年、幾田トキオを主人公に描くのが、このドキュメントフィクション「ユメの行方」である。　物語の舞台はレコード業界と芸能界、それらを結ぶ西麻布の街。トキオに絡むのは、西麻布の街を変幻自在に闊歩したミュージシャンや業界関係者たち。いずれも個性的な面々だ。　執筆者は、来年、結成２０周年を迎える音楽ユニット「Ｃｏｓａ　Ｎｏｓｔｒａ（コーザ・ノストラ）」を始め、アイドルからクラブミュージック、アンダーグラウンドまでノンジャンルで手がけるミュージシャン・音楽プロデューサー。【バックナンバーはこちら】Ｗｅｂ連載小説【ユメの行方】
http://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-column/news/20100527/enc1005271304000-n1.htm
地球がいったいいつまでもつでしょうか、、。
人間は一番有能な動物なはずなのに、一番地球を苦しめてる、
有害な動物でもあります。




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