Ｗｅｂ連載小説（６９）【ユメの行方】豪奢なマンションに圧倒されてしまった

Ｗｅｂ連載小説（６９）【ユメの行方】豪奢なマンションに圧倒されてしまった
　ｅｐｉｓｏｄｅ　６９　　Ｄｅｃｅｍｂｅｒ　１９８１　［ｔｅａｒｓ］作・桜井鉄太郎　「私のパパが借りてるマンションが赤坂にあるの。パパは今、ロンドンに出張中だから、家にあった鍵をママに内緒で持ってきちゃったんだ」　ナギはいたずらっ子のように舌を出してトキオに笑いかけた。　やがて赤坂の山王神社の近くでタクシーを降り、星のいっぱい出た寒い夜空の中を、２人は初めはゆっくりと無言で、一緒にいられる幸せを噛みしめるようにして歩いていた。そのうち何かにせき立てられるように足取りを速めて目的地に急いだ。　トキオはとにかく早く２人だけになりたかった。そして胸に浮かぶ限りの様々な言葉をナギにぶつけてめちゃくちゃに抱きしめてしまいたかった。そんな複雑に揺れ動くトキオの心を見透かすかのように、ナギははしゃいでいた。　「ここよ、パパのマンションは」　ナギが指し示したマンションは３階建ての豪奢なもので、おそらく外国から来た大使館員や商社マン用向けのものなのだろう。ケタ外れの重厚でゴージャスな大理石作りのエントランスに一歩足を踏み入れた途端、トキオは意味もなく圧倒されてしまい、さっきまでのナギに対して昂っていた気持ちは火が消えるようにトーンダウンしてしまった。　「ねえ、やっぱりｂｌｕｅ　ｒｏｓｅに戻ろうよ。残った皆には相当不謹慎なことをしてしまったんじゃないかと思うんだ、俺たち」　トキオのその言葉を聞いた途端、ナギはピクッとしたように動きを止め、すくんだようにじっと見つめてきた。　「あなたは私のことよりも友達に対する体裁の方が重要なの？」　そう叫んだかと思うと、後ろ向きになり始めていたトキオの理性を一気につき崩してしまうように、その両眼に急にいっぱいの涙を浮かべ、ナギは彼の腕を取り、揺さぶるようにして思いっきりその感情をぶつけてきた。＜続く＞［登場人物］幾田トキオ（２８歳）：Ｔｈｅ　Ｒｅｂｅｌ　を背負って立つ音楽プロデューサー加川渚（２２歳）：愛称ナギ。歌手志望の女子大生　　　　　　◇　１９８０年代初め、アートや文学、映像、そして音楽にポップなものが革命的に登場した。１９８１年に始まる日本のポップ／ロックシーンからクラブムーブメントまでの時代を実際に生きた青年、幾田トキオを主人公に描くのが、このドキュメントフィクション「ユメの行方」である。　物語の舞台はレコード業界と芸能界、それらを結ぶ西麻布の街。トキオに絡むのは、西麻布の街を変幻自在に闊歩したミュージシャンや業界関係者たち。いずれも個性的な面々だ。　執筆者は、来年、結成２０周年を迎える音楽ユニット「Ｃｏｓａ　Ｎｏｓｔｒａ（コーザ・ノストラ）」を始め、アイドルからクラブミュージック、アンダーグラウンドまでノンジャンルで手がけるミュージシャン・音楽プロデューサー。【バックナンバーはこちら】Ｗｅｂ連載小説【ユメの行方】
http://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-column/news/20100324/enc1003241256000-n1.htm
「笑う門には福が来る」これも全くその通りだと思いますね。
いつもにこにこしている門(一族、一家族)には自然と幸福がｙって
きます！！間違いないｗよし、帰りにマック寄って、
「スマイルひとつ」だなｗ


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